Sunday, August 25, 2019

渡米30年目の回想:英語をコミュニケーションの媒体とする私の異文化における人生



実は、今日、8月25日は私がアメリカの土を始めて踏んでから丁度30年目になります。


別にアメリカへ来たくて来たというよりも、寧ろ、日本で3浪したにもかかわらず志望校に合格しないまま根が張れない浮き草のような目的のない万年浪人になりかけていた当時の私に、アメリカ人の友人から、アメリカの大学に行くのはどうか?と言われたことがきっかけで、志望校に受からなかった腹いせもかねてアメリカの大学に矛先を変えてみることにしました。

高校の時の英語は総じてごく平均程度でしたが、オーストラリアにペンパル(そして、今でも彼女と35年以上の長いおつきあい)がいたこともあって英語を通して、まだ直接触れることができない遠い異国の何かを新鮮に感じられる体験から、英語への興味は寧ろ高いほうでした。しかも、大学受験において、医学部を志望しており、医師となれば、脳外科医として活躍する前にアルベルトシュバイツアーのように発展途上国で医療活動をしてみたい、という“夢”も抱いていたので、理系とはいえ英語だけは人並み以上に勉強しておこうという心構えはありました。更に、修猷館高校3年の時の英語の先生(浅田正人先生)はドイツ文学を東大大学院で修められたすごい方で、英語とドイツ語の深い歴史的、言語学的、なつながりについて触れられ、英語への興味は更に高まりました。このことが理由で、当時、渡辺昇一先生が記された“英語の語源”という講談社新書を一気に読み、語源に注意を払いながら英単語を覚え、整理する習慣がつきました。

実は、暗記に比べて一見面倒のようかもしれませんが、語源に注意を払う英語の勉強法は、TOEFLは言うまでもなく、SATによく出てくる難解な語彙、それに、大学院受験に必要だったGREというテストでも非常に役立ちました。もちろん、大学、大学院、での学術用語をマスターする上でも語源に気を配った勉強は寧ろ、当然だと感じました。おかげで、大学院でラテン語やギリシャ語を嗜んだ際に、あの頃に身につけた語源に注目した勉強法が功を奏しました。そもそも、英単語の語源は大きくギリシャ語系とラテン語系に分けられますから。それに、浅田先生の比較言語学的な影響もあってか、渡米後、ドイツ語だけでなく、フランス語やスペイン語を学ぶ際、英語、特に、英語とのつながりを語源的に把握することができ、各々の言語を系統的にしかも歴史的、文化的背景を含めて学ぶことができました。

当時はまだeメールやネットが無かった時代、その友人出身のミズーリ州で私のような者でもほぼ確実に受かるような、しかも、費用もなんとかなるような大学をアメリカンセンターの図書館で探し、直接、大学に手紙を書き、書類一式を送ってもらい、横田の米軍基地内にあるハイスクールで在日米軍士官や兵士達の子弟と一緒にSATというアメリカ大学受験に必須なテストを受け、アメリカンセンターでアメリカ留学を目指す多くの日本人と一緒にTOEFLを受け、入学許可書(I-20)が届くとすぐにアメリカ大使館で学生ビザを申請し、インタビューを受ける、というように準備を進めてきました。これらのテストを受けてみると始めての割りに意外と点数が取れた(しかし、SATの総点数の大部分が数学で稼いだと記憶している)のは以外でした。そういうことで、”へ~、俺のような日本の大学受験戦争の落ちこぼれでもマジに拾ってくれる大学がアメリカにあるんだ、だったら一応行ってみようか”、という気持ちでした。当時、驚いたのはアメリカの大学には“入学金”というのが無いということでした。それに出願料は確か25ドルだったと思います。日本の大学の出願料や入学金とは桁違いに安い。


あれは平成元年のこの日、たった一人で誰からも見送られることなく、死んだオヤジが海外出張で使ってたバッグ一つで先ずロスへ飛び、ロスからダラス、そして、ダラスからセントルイス。そして、その夜、セントルイスの友人の実家で一泊し、翌朝、セントルイスからグレハンバスでミズーリ州南東部のミシシッピ川沿いのケープジラードという元々フランスからの入植者達が先住民と交易していた田舎町に到着。そう、確か、高校の世界史の時間、1803年にアメリカがフランス領ルイジアナ(といっても今のルイジアナ州だけでなく、ロッキー山脈のすそから西海岸までのメキシコ独立以前のスペイン領までにミシシッピ川以西の広大な領土がフランス王であるルイ(ルイス)の名をとった当時のフランス領ルイジアナ)を購入したことを思い出しました。それまでは、ここはフランス人と先住民が一緒に暮らしてたんだ、と勝手に歴史的な想像にふけってしまいました。私が到着した時にはその面影はありませんでしたが。。

飛行機(アメリカン航空)の中やロスの空港で通じていた当時の私の英語が、大学への道を尋ねたケープジラードのおっさんになかなか通じず、しかも、私もこのおっさんの強い南部訛の英語がとても分りにくく、このど田舎の大学でこれから4年間学ぶのに、初日からこの地で話す英語が分らんかったらこの先真っ暗じゃないか、ってビビりました。しかし、なんとかキャンパスに辿りつき、寮でルームメートのアメリカ人学生、ティム、会って、自己紹介の後、話していると彼の英語は理解できるし、彼も私の英語を理解しているではないですか。で、だんだん打ち解け、話が進んでいくうちに、ティムは私に合い槌を打つかのように“cool!”という言葉を連発させます。しかし、その時の私は、どうして彼はこのくそ暑いときに”涼しい!“と私が話したことに対して言うのだろうか、と不思議でした。しかし、話の流れを止めることに気兼ねというか、日本からはるばるやってきたバカという印象を与えることが嫌で、その時、彼がどうして“cool!” を連発させるのか聞きませんでした。そうしている内に、彼が、”お前、おなか空いてるだろう。食べに行こうぜ。俺、車あるけん、連れて言ってやるけん。どこで食べたい?“って聞いてきたんで、”気を遣ってくれてありがとう。そうだな~、マクドナルド!“というと、彼は”何?“って聞いてくるので、通じていません。そう、あの時、私は彼にマクドナルドと”ジャパングリッシュ“で言っており、彼の耳にはちんぷんかんぷんだったんです。そこで彼は紙と鉛筆を差し出し、書いてみろ、というので、McDonaldとちゃんと書いたら、”Oh, McDonald!“(オ~、マ ックッドーナルド!”と初めて理解してくれました。その時、日本にいた時以来のマクドナルドの発音がアメリカでは通じない”ジャパングリッシュ“であると気つき、恥ずかしい思いをしました。そして、その夜、密かに辞書で”cool”という中学一年で習った言葉を調べてみると、なんと、それには”いいね“とか”いかすね~“とかいう口語的意味があるということが分り、納得でき、その夜はぐっすりと眠れました。

生まれて初めての海外。そして、アメリカでアメリカ人と話す英語は日本にいた時、在日外国人と話していた英語とは違うな~と既に感じ始めていました。

そこで、当時の私の英語にまつわる逸話をもう一つ。

ルームメートからどんどんアメリカ特有の口語表現を吸い取るようになり、セメスターの中ごろまでには私もかなりこうした口語表現やスラングなんかも使いこなせるようになり、キャンパス内での友達がぐっと増えました。そうした中、同じ寮の女子棟にいるかわいいクリスチーナという女の子にルームメートから習った口語表現の一つである“How is it hanging?、というフレーズで彼女に、”(調子は)どう?“という意味をこめて使ってみると、なんと彼女の反応が以外にも以外でした。私はてっきり彼女が、”マサ、あんた先日アメリカに来たばかりなのにもうアメリカ人のようにしゃべれるんだね“って思ってくれるだろうと思ってたのが、とてもびっくり、しかも、あまりいい意味でなく、驚いた顔をし、何も言わずにプイってそっぽ向いて立ち去ってしまったんです。私は即座に何か悪い予感がしたものの、事の成り行きがつかめず困惑してしまいました。で、クラスから帰ってきたルームメートにそのことを話すと、彼はいきなり大爆笑!でも、こっちはわけがわからないので、”なんだこの野郎、人が困ってるのに大爆笑なんかしやがって“, といった感じです。で、笑い終わったルームメートは、”マサ、いいか、あの表現は女の子にはつかっちゃいけないんだよ。と言うのは、女の子にあの表現を使うとあんたのおっぱいの垂れぐあいはどう?ってな意味になるからね。。しっかし、まさかお前、あの表現をよりによってクリスチーナにぶつけてみるとは、勇気あるな~“って感心してくれているではないですか。で、彼は、”すまん、すまん、俺ががちゃんと釘さしておけばよかった“と言いました。でも、もう後の祭り。その晩はクリスチーナのあの驚いた顔が走馬燈のように浮かぶのでろくに眠れませんでしたが、翌日、勇気をしぼって、彼女に事の成り行きを説明すると、さすがクリスチーナ、かわいいだけでなく理解もあり、”いいのよ。わたしも、もしかそうじゃないかなって思ったから“、と言ってくれただけでなく、軽くハグしてもくれました。その夜、このことをルームメートに話すと、”何だって、お前、あのクリスチーナとハグしたって?“  こっちからしてみれば、やった~!です。塞翁が馬って、こういうことも含むんでしょうかね?でも、セクハラ問題が話題の今日この頃、今からおもえばあの時のこの体験、ぞっとします。クリスチーナ、異文化問題を理解してくれたので、私をセクハラで訴えたりしませんでしたから。

あの日から今日まで30年間、たまに帰国した時意外、ずっと英語という母国語でない言語で暮らしてきました。大学、大学院、そして、社会人体験はすべて英語をコミュニケーションの媒体としています。今では英語の他、必要に応じてスペイン語も少し使いますが。

このように英語という中学入学早々習い始めた母国語でない言葉を人生の半分以上もの間あたりまえのように異文化の中で毎日以心伝心の媒体としていると、自分は今でも日本人なんだろうか、と自問することはありませんか?、とよく聞かれます。実は、そうした時がありました。しかし、今では、こうした自分のアイデンティティーの自問の結果、自分は今でも日本人だと自覚しています。いや、寧ろ、日本で暮らしていた時以上に自分は日本人なんだと強く自覚しています。これは、私自身が30年という歳月をかけてきた異文化適応の必然的な結果です。

思えば、30年前の今日、初めてアメリカへ来たときにバックに詰めていた物の中に、岩波新書の万葉集(上下、二巻、斉藤茂吉、による編纂)があります。別に誰からもアドバイスされたわけではないのですが、なぜか私は万葉集を持って行きたいと潜在意識的に考えていたようです。そして、アメリカでの留学において辛い時、時折、万葉集を開き、特に、故郷を遠く離れ、国防の任務に就く防人が故郷の親兄弟や恋人などへ詠んだ歌を涙を流しながら何度も読み、乗り越えてきました。
Related image


こうしたこともあって、表面上、いくらまわりのアメリカ人のように英語を媒体としてコミュニケートしながら、アメリカという多民族、多文化、の社会環境で人生の半分以上を費やしても、私の心はいつまでも日本人なのです。そして、それだからこそ、英語をいう媒体でコミュニケートするまわりの人達からも日本人であると見られ、日本や日本文化についていろいろ質問されることもあれば、他の国々から移民してきた人達からは私はどうやってアメリカの多文化ダイナミズムの波に溺れることなく日本人として生きてこれたのか興味津々に聞かれます。勿論、こうした質問に今ではしっかりとできるだけ分りやすく答えることができます。なぜならば、大学や大学院、さらにメンタルヘルスの臨床や病院チャプレンとしての実地研修において、幾つかの異文化コミュニケーションについての講座をとったからというよりも、私自身が異文化で紆余曲折しながら今まで生きてきた体験を共有することができるからなんです。先述した当時の私の英語についての笑い話も、こうした私の異文化適応における道のりの道程の幾つかなのです。幕末に当時ご法度だった海外渡航を試みた吉田松陰らが唱えた和魂洋才の教えの深さが今、やっと理解できるような気がします。

さて、今日の締めくくりに英語学習の面白さを一つ紹介いたします。

Fineという英単語、確か、誰でも中学一年の英語の教科書のLesson 1でお目にかかりますね。

“Hello! How are you?”
“I’m fine. Thank you. And you?” というように。

だから、大抵の日本人はfineという単語には“元気だ”とか“調子はいいよ”といった意味があると覚え、連想できるようになっています。ところが、海外旅行や海外出張でレンタカーを借りて、ぶっ飛ばしすぎて、オマワリからスピード違反で捕まると、
“Your fine is $120”って言われると、ええ?それ、どういう意味と思う人がいるかもしれません。
確か、fineは元気とかいう意味なのに、なぜオマワリはスピード違反した私に“お前の’元気‘は120ドルだ、なんて言うのだろう?と不思議に思うことでしょう。

こうした体験、実は、先述したように、私が始めてアメリカ人のルームメートと話をしていた渡米翌日の夜、彼が連発していた“cool”の意味がわかっていなかったことと並行できます。”Fine“も”  cool“もどちらも中学一年レベルの簡単な単語ですが、どちらも中学一年で習ったこと意外の意味があるのです。それだからこそ、こうした一見簡単な単語でも時と場合によってversatileに活用できるのです。そうすることができれば、コミュニケーションの媒体としての英語も活き活きしてきます。

When I’m fined, I don’t feel fine at all, even it’s such a fine day.

It′s a hot day on the beach. And, her hot bikini looks are so cool. / It’s a hot day on the beach. And, look at that man with muscles! He is so hot! And, he looks so cool!

こういうようにfine coolという中学一年で習った同音異義語を楽しく学ぶといいでしょうね。

私なりの訳:

罰金科せられると、天気がよくても気分がぶち壊しだよ。
今日はビーチでの暑い日。彼女の“熱い”(セクシーな)ビキニすがた、いいね~(いかすね~)/ 今日はビーチでの暑い日。ほら、見て、あの筋肉もりもりの男!彼って“熱い”(セクシー)ね~!とてもいかすわ~!

No comments:

Post a Comment